死にたい夜の外伝

こんばんはシライシです。

先日「死にたい夜の外伝」という演劇公演を観てきました。感想をここに残します。自己満足な記事なので文章はめちゃくちゃだし、偏見まみれです。

セリフを引用していますが、記憶から引っ張り出しているものなので一字一句正確というわけではありません。

ネタバレしまくります。それでも良いという人のみ読んでください。

 

まず、結論から言うと「めちゃめちゃ面白かった!!!!!」

まず私自身深夜ラジオリスナーなので、テーマがストライクゾーンど真ん中。そして作品に出てくる登場人物のように、昔ある番組で常連ハガキ職人であった時期もある。こんな作品が響かないわけないのだ。

他にも色々と残したいことが多すぎるので、ストーリーに沿って感想を書く。

 

まず主宰、奥村さんによる諸注意とご案内。これはストーリー外の事ではあるが、終わってみるとすごく意味のあるシーンだったなと思う。

この作品は笑いが多く起こり、シリアスでありながらも、お客さんが笑ってくれないと成り立たないものであった。笑いを発生させる上でとても難しい事、それは「初笑い」だ。コントでも漫才でも1発目の笑いをどこに持ってくるのかが大切で、そこをミスると全体的に笑えなくなってしまう危険性がある。ましてやこれは舞台。お笑いの現場ならゴールが笑いであるという大前提が共通認識としてあるが、舞台はそうではないはず。ゴールは涙を流す事、考えさせる事、笑わせる事など様々。客の半分は「これから何が行われるのだろう?」という感情の中、「ここはたくさん笑う空間ですよ」という認識を定着させなければいけない初笑い。ここまで書けばみなさんお分かりだと思うが、初笑いはこの舞台においてクソクソ重要であり、めちゃくちゃプレッシャーである!!

んで、話を戻して主宰の挨拶&諸注意だ。私は初めての舞台鑑賞だったので、開演前の諸注意ってお堅いイメージがあった。(周りのお客様のご迷惑になりますので携帯電話の電源はお切りください。また、上演中に体調を崩された方は…)しかし!奥村さんの挨拶はとてもフランクであり、笑いも混ぜつつ重要事項はしっかり伝えていて素晴らしかった。ここで笑いをポンポン取ることによって「これから面白いことが起こりそうだ」という認識を持つことができる。さらに演目前に口角を上げさせることによって、笑うことへのハードルを良い意味で下げている。この導入部分からすでに初笑いへの導入が始まっているのだ。すごい。すごすぎる。この舞台におって大事な「初笑い」この重要性を理解していた主宰だからこそ、あの挨拶は成り立っているし意味があるものなのだなと感じた。

 

さあ、それではストーリーの中身に入ります。

暗転してから流れたのは「夜のライン」


(((さらうんど))) / 夜のライン (Music Video)

これはTBSラジオ「ハライチのターン」でオープニング曲として使われています。この曲がかかった瞬間私はすぐピンときてニヤニヤしました。「私はこの曲を知っているぞ」と。ターンリスナーにとって夜のラインは始まりの音楽であり、夜の合図なのです。知ってる人は知っている。そして自分は知っている側だという優越感。これは深夜ラジオと同じ要素です。教室の片隅で「俺はこんなに面白いラジオの常連なんだぜ」という。そんな感情を呼び起こさせるためにもこの選曲だったのかなとか思ったり。

それでは冒頭のシーン。「23歳で何者にもなれなかったら、死のうって決めるんで」という主人公のセリフ。これは伝説のハガキ職人ツチヤタカユキさんの著書「笑いのカイブツ」からの引用でしょう。笑いのカイブツを読んでいた人はこの舞台の主人公はツチヤタカユキでもある事にこのセリフでピンときたでしょう。

ツチヤタカユキさんはオードリーANNなどで無双していたハガキ職人で、若林さんにもその実力を認められています。笑いに狂って人生も狂わせるという激ヤバ鬼ヤバ人間で、髪の毛は笑いに必要ないという理由から頭を剃り上げるストイック人間なのです。(ここではツチヤタカユキさんを説明しきれないので「笑いのカイブツ」読んでください。なんなら貸します。)

そして後ろでは汚いおじさんが語りかけてきたりふたりの軍人が銃と斧持ってたりと、かなりカオスです。そんな中おじさんのネタがラジオで読まれ、主人公はズブズブ深夜ラジオの世界に引き込まれていくのです。では何故こんなにも分かりづらく混沌とした演出だったのでしょうか。私は「深夜ラジオとの出会いはこれくらい衝撃的なのよ」「これからこの凶器溢れる職人ネタを超えていくんだ!」という2点を表現したのだと思います。違ったらごめんなさい。ホントに深夜ラジオってカオスなんですよ。ポポゴリラの金玉のシワにココアを流し込むというネタが死ぬほどウケるのがラジオなんすよ。控えめに言って最高。

そして後ろで流れたラジオの「的場浩司イジる流れできてるじゃねーか!」はいここ良いですね。この舞台に出てくるリッチョンラジオの元となっているアルコ&ピースANNでは昔、的場浩司をネタに組み込むメールが流行ったんですよね。あ~懐かしい。的場浩司ってなんか別に悪いことしてないのにイジりしろあるんですよね。ざわちん然り神田うの然り。そういうことも思い出したりして楽しかったです。

鳩(主人公)はそうしてメールを送り始め、初めて採用された際こう言います。「ラジオの向こう側で起こる笑いは僕を満足させた。何者かになれた気がした。」ホントそうなんすよね~。私が思ってたこと全部言ってくれましたわ鳩くん。私もラジオでメールが初めて採用された瞬間こう思ってました。世界に認められた瞬間というか。自分が生み出したボケでスタジオが笑い、電波に乗って数十万人が笑うんですよ?そりゃあもうエクスタシーですよ。この台詞は職人達の気持ちを的確に表現していたのではないでしょうか。

そんな最中、リッチョンラジオの終了が決定してしまいます。これはヤバい。アルコ&ピースANNもそうでした。ANN0から始まり1部昇格、そして異例の2部出戻り。放送の内容は頭ひとつ抜けて面白かったし、数字もかなり取っていた。それでも終わってしまったのがこの番組。その当時は本当に悔しかったです。いや、今でも思い出すとやるせない気持ちになる。3年番組でこれなんだから、10年常連やってたらそりゃ死にたくもなりますよ。他に生きる希望無いわけだし納得。

鳩はラジオの最終回と共に死んで本当の伝説になることを決意。いやお前本当にツチヤタカユキだな!ツチヤタカユキさんも、笑いの聖地なんばグランド花月の前で死んで伝説になろうとしていました。そこがリンクして、うわ~ってなりました(語彙力)。極端な人ってよく煙たがられますが、私はかっこいいと思います。鳩にもツチヤタカユキさんにも極端な覚悟があります。このシーンで鳩に突きつけられました。「お前に覚悟はあるのか」と。

鳩は後輩に向かって「シャムシェイドなんてバカが歌う曲だぞ」と言います。これも良かったですね。深夜ラジオって悪口ネタのオンパレードなんすよ。でもそれは職人さんもネタに昇華しているし、芸人さんもカバーを入れるからこそ成り立ちます。しかし、そんなネタばかり考えていると根っから腐ってくるんですよね、人間性が。そんな人間がネタでもなく現実世界で口を開くと、こういうどうしようもない悪口だけが先行しがちなんです。

そしてまた後輩を引き留める為に女の子も来ることを説明するのですが「背が高くて髪もサラサラで鼻がスッと通っていて、顎が八方に割れている」と最後にボケてしまうのです。観劇した諸君よ!この台詞をただのボケ台詞と侮るなかれ!常連にも登り詰めるような職人さんって本当にこうなんですよ。学校行って帰ったら家事やって、その中でもネタを生み出して他人のネタに勝っていかなくてはならない。そうなると日常生活にネタ生産活動が侵食してくるんです。なんで遅刻したんだ?と問われれば「普段真面目なA君が珍しく遅刻。なぜ?」という大喜利に脳内変換されてしまうのだ。レジェンド職人を目指すということは普通の生活も普通のコミュニケーションも許されないのです。故にこの台詞は単なるボケではなく、深夜ラジオにハマった人間のなれの果てを表現してるんです。悲しきモンスターでもあるんですよ、一部のハガキ職人って。

しばらくして店員とのやりとりで出てきたプレミアムコースという言葉に反応してプレミアムアイアンマンの話が盛り上がります。僕の記憶ではアルピーANNにはこんな回ないです。でも、ありそう感はすごいです。奥村さんこの辺のラインよくわかってるな~と思わされました。てか普通にプレミアムアイアンマンの回あったら面白そう。「カップラーメン用3分タイマーがついている」みたいな基本のボケから始まり、プレミアムアイアンマンあるあるとか、プレミアムモルツないないとか募集してないテーマでメールが殺到したり...容易に想像できます。

そしてカラオケボックスに集まった4人の職人が一気に打ち解け自己紹介。ジジイはRN(ラジオネーム)ドライオーガズム先輩、学生はRN僕の精子を君に注ぎたい童貞、デカい人はRNマジカルインポでした。いや、このRNほんとにいるんじゃねーの!?くらいのクオリティですよね。このRNヤバいだろっていう人現実にも結構いるんですよ。コンジローム小林とか玉金ピロリロとか和田さんの脱ぎたてパンツかぶりたい童貞とか。ここも奥村さんのセンスが発揮されてる気がして凄い好きです。

さあそしてメインルームへ4人が果敢に乗り込み暗転。かかった曲はELLEGARDEN「Stereoman」


Ellegarden - Stereoman

アガるーーーーーーーーーーーーーーー!!!!最高です。この曲はアルピーANN0のオープニングテーマなのです!今にも「こんばんは。アルコ&ピース酒井健太です。平子祐希です。」が聞こえてきそうではないか!あと、ここのタイトル照射かっこよすぎて鳥肌ゾワゾワでした。

W杯の感想をだらだら喋るにわか女も良かった。ああいう奴ホントにいるからびっくりしますよね。この舞台全体がそういう世の中を斜めから見てる奴からの視点で構成されていて、そこがブレなかったし自分も腐ってる人間なんでとても見やすかったです。

ラジコは信用できないのくだり、わかりみが深かったです。鳩の言うとおりラジコは信用ならないんです。ゴム放送(生ではない放送形態)の場合や聞き逃した際はラジコを使います。でもラジコって30秒くらい遅れるし、変なWi-Fi繋がっちゃうと音声止まるし職人さんにとっては信用のおけないものなんですよ。しかもアルピーANNとなるとなおさらです。あの番組ではスピードスターという採用形態が稀に使用され、ネタの面白さより送ってきた早さ順にメールが読まれるケースがあるのです。それなのに30秒も後れを取っていたら職人として失格、というマインドから絶対にラジコじゃ聴かないという鋼の意思ができあがったのでしょう。簡単に「ラジコで良いじゃん」と片付けられない理由がここにはあるのです。

そして次に登場したのがリッチョンバッチ。この番組の最高ノベルティです。これも多分アルピーANNのカンバーバッチから来てますよね。カタカナ一文字のみ書いてあるというデザインも似てたし。あの小道具、手抜きでダサい缶バッチにしてるわけじゃないんですよ。元となったデザインもあんな感じでショボいんです。ベネディクト・カンバーバッチって俳優いるんだけど、カンバーバッチってノベルティの名前っぽくね?というノリから生まれたこのグッズ。懐かしいなぁ。そしてマジカルインポがリッチョンバッジをGETしたネタ「トランプマンふじいあきらを抹殺する」これも懐かしいな~。アルピーANN家族のコーナーで一時期だけシリーズものと化したトランプマンシリーズ。最後は確か、マッドサイエンティスト米村でんじろうが現れてトランプマンの魔術に科学で圧勝するんだよな。「出たとこ勝負も案外悪くない」とか名言残すんだよな。懐かしいよぉ。みんなアルピーANNシリーズ聴いてよ。みんなで懐古して盛り上がりたいよ。

鳩が女の介入を最後まで許さなかったのも好きです。深夜ラジオという高尚でハイレベルな俺たちの遊び場に踏み込んでくるんじゃねぇ!って事なんでしょう。わかります。こういうのって男女差別になっちゃうし、あまり良くないんですけどわかります。同じレベルで深夜の笑いに熱狂している気がしないんですよね。いや、レベルの違いというか種類の違いというか、何かが違うんですよ。大抵の女は。稀にそういうのを超越した深夜ラジオのマリア様が現れますが、作中に出てくる女2人はにわか以上熱狂未満という絶妙なポジションで上手だなと思いました。

女がいる部屋にドリンクを持ってきた店員も超好きです。「女つけちゃって最高じゃないすか。あー俺も混ざりてぇ。」というか店員さんのキャラが全登場人物の中で一番好きでした。全員にキャラがあって全員があの時を生きていたんだなとしみじみ思います。もうウェイ君さえも愛おしいです。

女とワイワイできて舞い上がっているシーン、最初は少し面白かったです。でもすぐに気がつきました。私の中のRN○○が(RNは恥ずかしいので秘密)語りかけてくるのです。「お前はこれが面白いのか?」と。答えはノーだ。ふと鳩を見ると地獄のような顔をしていた。きっと同じ感情だっただろう。こういう女とウェイをこき下ろしてきた俺たちがこんなことで身を滅ぼしてはいけないのだ。私は普通に大学生をやっているので女性がいる飲みの席に参加することはある。しかしそのたびラジオ側の自分が「おいおい、お前マジかよ。そんなに楽しそうにしちゃって。」と嘲笑してくるのだ。そうなるまで深夜ラジオに身を埋めてしまったら一生ウェイの楽しみを本域で味わうことはできない。鳩はそうだった。でも他の奴らは違った。そこが本気で死ぬ覚悟がある奴と無い奴の明確な差だったと今ではわかります。

「筆おろししてあげよっか?」「マジ!?」「ギャグだよww」のくだりは殺意が沸きました。そして同時にそういう細かいところの描き方が上手だなと感じました。感情ぐちゃぐちゃ。

そしてぶち切れた鳩が「ルート66横断スペシャルで紹介されたステーキ屋の名前は?」という問い。はい!はい!はい!ビックテキサン!って答えたかったです。これもアルピーANNで実際に行った企画です。こういうわかる人にはわかるネタが随所にちりばめられていて、私的にはもう最高のそれでした。

そしてラジオを出したがつかず、オガセンの出したラジオも没収(ここでちょいとアルピーD.Cガレージが流れて興奮)。ラジコもメンテナンス中。一気に絶望の淵です。私が思う面白いストーリーに必須の要素、それは絶望です。こうやって主人公達がどうしようもなくなっていくと「いいぞいいぞ、物語が面白くなってきたぞ!」と心の中でワクワクします。このシーンも半ばにやつきながら観てました。

せっかく地獄のひょっこりはんモノマネまでして取ってきたラジオも鳩が捨てます。そりゃ嫌だよなぁ、ヘコヘコして面白くないことしてもらったラジオで聴くなんて。コンビニの店員に土下座してもらった残飯に食らいつくのと一緒ですよ。鳩だけは心意気までも伝説のハガキ職人でありプライドは捨てていないのだ。なんせこのあと番組と共に死んで伝説にならなるのだから妥協してはならない。自分のネタが読まれれば読まれるほどプライドって高くなるんですよね。他の職人さんはどうかわかりませんが、私はそうでした。クラスの1軍より面白いし、今まで何十万人単位を相手に笑い取ってきたという自負が。そういうプライドが人生を滞らせるんですよ。わかってるんですけどね。わかっててもプライドは捨てられないんです。そういう感情が象徴的なシーンでした。

池袋が入ってきたのも良かったですね。予想の斜め上を行くというか裏切りというか。裏切りって笑いの基本じゃないですか。そこをバシッとわかりやすく提示してくれたのが池袋の登場。そのおかげで「この俺たちの一連の流れがネタなんだよ!」この台詞にも説得力が生まれていました。

「本当に死のうとした最後の日がボツってなんですか...せめてオチをください!」ここはマジに泣きそうになりました。オチという呪縛から逃れられないですよね...

誰にも理解されない者の...的なことがどこかに書いてあって「いや職人同士わかり合えてんじゃん」思ってましたが違いましたね。鳩だけは誰ともわかり合えないんですよ。

そして番組から電話がかかってくるシーン。そうそうたるメンツが名前を出すが、パーソナリティには認知されておらず電話をそっと切る。そして暗転。え?終わったの?ってなって怖かったです。このまま終わっていたらちょっとしたトラウマでした。ピクミン脱出失敗EDくらいのトラウマもんです。

幸いにも物語は続きます。認知されていない、何者にもなれていなかった。この事実を突きつけられてまだ始まってすらいなかった事に気がつきます。なんかすっっごく虚しくて、でも希望のにおいを感じるシーンでした。結構好きです。

そして鳩は自分なりの答えを出してこの物語はおしまいです。

 

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーよかったーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

おもしろかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

本当に面白かったです。もう面白いとか通り越して尊い。尊みが深い。

こんな素敵な作品を生み出してくれてありがとうございます!そしてこの作品見に行こうと誘ってくれてありがとう!お母さん産んでくれてありがとう!

最高!それに尽きます。いつの間にか8000文字近く書いてました。こんな長ったらしい文章読んでくれてありがとうございます。

それではさようなら。